昔、ある男がエンマ様に会いに行き、天国と地獄というのは、どういう世界なのかを聞きました。すると、エンマ様は、男に天国と地獄の様子をそれぞれ見せてくれました。
まず、地獄では、ちょうど食事の時間だったので、人々が、ながーいハシを持って大きい鍋の前に集まっていました。この地獄では、ながーいハシで、食事をしなければいけない決まりなのです。人々は、ながーいハシで鍋の中のごちそうをとって食べようとするのですが、あまりにながーいので、どうしても自分の口にごちそうが届きません。
それで、みんな、何も食べられず、おなかをすかせ、やせこけて、他の人の食べ物を横取りしようとしてケンカばかりしていました。
エンマ様は、次に天国をみせてくれました。
天国も食事の時間でしたので、人々は、地獄と同じながーいハシを持って地獄と同じ大きい鍋の前に集まっていました。天国でも、ながーいハシで食事をしなければならない決まりなのです。天国の人々は、おだやかな顔をして楽しそうにごちそうを食べていました。ながーいハシで、おたがいに仲良く他の人とごちそうを分けあっているのです。
こうして、地獄にいる人は、自分のことばかり考えているために、いつまでもケンカをして何も食べられず、天国の人々は、おたがいを思いやっているので仲良くくらせるのだ、とエンマ様が教えてくれました。